引っ越し費用はどこからどこまで経費にできる?項目・条件を徹底解説

2024.04.05 2024.04.28

 

この記事では、引っ越し費用と経費の関係を解説します。

引っ越し費用が経費になるケースや計上できる項目が分からず、悩まれている個人事業主や経営者の方もいるでしょう。

本記事では、経費計上できるケースから、経費に計上する際の注意点まで、徹底解説しています。

引っ越しに伴う経費計上の基本が理解できるため、店舗や事務所の引っ越しを考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。

引っ越し費用は経費になる!【事業に関わる引っ越しのみ】

引っ越し費用を経費にしたい

結論からいえば、事業に関わる引っ越しなら、かかる費用は経費として計上できます。

ただし、経費計上するには、計上できるケースや勘定科目について、正しく理解する必要があります。誤って経費計上すると、税金のペナルティを課せられる恐れがあります。

正確に経費処理すれば、引っ越しにかかる費用の全額や一部を、問題なく経費にできるでしょう。

法人・個人事業主が引っ越し費用を経費計上できるケース

法人や個人事業主の引っ越し費用を、経費に計上できるケースを紹介します。以下の3パターンは全体、または部分的に事業に関わる引っ越しなので、経費計上が可能です。

  • 事務所のみの引っ越し
  • 自宅兼事務所から事務所部分だけの引っ越し
  • 自宅兼事務所から新たな自宅兼事務所への引っ越し

なお、自宅兼事務所から自宅部分のみ別の場所に引っ越す場合は、事業と関係のない引っ越しになるため、経費計上できません。

各ケースについて解説していくので、参考にしてください。

事務所のみの引っ越し

事務所から新しい事務所に引っ越す場合、引っ越し費用は全額経費に計上できます。

この場合、引っ越し荷物の全てが事業関連のものとなるためです。

事務所の引っ越しの際は、引っ越し業者に支払う料金以外にも、大きな支出がたくさんあるでしょう。漏らさず経費計上すれば、結果的に引っ越し費用の節約につながります。

自宅兼事務所から事務所部分だけの引っ越し

自宅兼事務所から新しい事務所に引っ越す場合も、引っ越し費用を全額経費に計上できます。事務所部分のみなので、引っ越し内容の全てが事業に関わると判断されるためです。

ポイントとしては、新しい事務所へ運び込む物品は、事業と関連のあるものでなければなりません。

後述でも解説しますが、経費にできるのはあくまでも事業に関わる引っ越しのみなので、注意しましょう。

自宅兼事務所から新たな自宅兼事務所への引っ越し

自宅兼事務所から、新たな自宅兼事務所に引っ越す場合は、引っ越し費用を一部経費に計上できます。全額計上できないのは、事業と関係のない自宅部分があるためです。

このケースの場合は、事業に使っている部分だけを、引っ越し費用として経費計上できます。つまり、自宅兼事務所の引っ越しの際は、家事按分しなければなりません。

家事按分については、後述で解説するのでチェックしてみてください。

経費に計上できる引っ越し費用の勘定科目

引っ越し経費の勘定項目

経費に計上できる引っ越し費用の勘定科目について解説していきます。

引っ越し費用を経費に計上する際は、内容によって勘定科目が異なるので注意しましょう。

勘定科目 主な費用
雑費 ・引っ越し業者へ支払う料金
・引っ越し時の不用品処分費用
支払い手数料 不動産事業者へ支払う仲介手数料
修繕費 ・移転先の改装工事費用
・退去物件の原状回復工事費用
地代家賃 ・移転先物件の賃料
・移転先物件の礼金(20万円未満)
長期前払費用 20万円以上かかる移転先物件の礼金
損害保険料 移転先物件の火災保険料や地震保険料
差入保証金 敷金
福利厚生費 事業者が負担した従業員の引っ越し費用
租税公課 登録免許税・印紙税

それぞれの勘定科目について、仕訳例を紹介しながら解説していきます。

雑費

引っ越し業者に支払う料金や引っ越し時の不用品の処分費用は、勘定科目の雑費で経費計上します。

雑費とは、「販売費および一般管理費」に含まれる費用科目の1つで、どの科目にも振り分けられない勘定科目です。

引っ越し業者に支払う料金や不用品の処分費用は、事業上で重要度が低いため、一般的に雑費として扱われます。引っ越し業者に15万円を支払った場合の仕訳は、以下の通りです。

借方 貸方
雑費 150,000円 現金 150,000円

臨時的な高額支出なので、「引っ越し費用」や「移転費用」といった勘定科目を新たに設定しても良いでしょう。

支払い手数料

不動産事業者へ支払う仲介手数料の経費計上で使用する勘定科目が、支払い手数料です。

支払い手数料は、商品やサービスに伴って発生する手数料などの費用や、専門家に支払う報酬を計上する際に使用します。

不動産業者に仲介手数料10万円を振り込んだ際の仕訳は、以下の通りです。

借方 貸方
支払い手数料 100,000円 普通預金 100,000円

なお、引っ越し時の不用品の処分費用も、支払い手数料で処理できます。

修繕費

移転先物件の改装工事や、退去物件の原状回復工事にかかる費用は、修繕費として計上します。修繕費とは、事業経営に必要な固定資産の修繕に支払う費用です。

固定資産は、事業に関わっていれば退去物件から移転先物件まで対象に。退去物件の原状回復工事で、8万円支払った場合の仕訳は以下の通りです。

借方 貸方
修繕費 80,000円 現金 80,000円

ただし、移転先物件の改装の場合、工事内容によっては「建物」や「建物付属設備」で資産計上しなければならない場合もあります。その場合は、耐用年数に応じて減価償却してください。

地代家賃

移転先物件の賃料を計上する際に使う勘定科目が、地代家賃です。地代家賃で計上できる費用は、事業に必要な事務所・店舗・倉庫の家賃や管理費、駐車場の賃料が該当します。

20万円未満の礼金も、地代家賃として計上可能。例えば移転先物件の貸主へ12万円の礼金を振り込んだ場合は、以下のような仕訳になります。

借方 貸方
地代家賃 120,000円 普通預金 120,000円

礼金が20万円以上かかる場合は、勘定科目は長期前払費用になるので、そちらで計上しましょう。

長期前払費用

移転先物件で礼金を20万円以上支払う場合は、勘定科目の長期前払費用を使用します。

長期前払費用とは、前払費用の中で、決算日から1年を超えて費用化されるものを計上する勘定科目です。

仮に事務所の礼金で28万円を振り込んだ場合は、以下のように仕訳をします。

借方 貸方
長期前払費用 280,000円 普通預金 280,000円

20万円以上の礼金は繰越資産となるため、支払い時は長期前払費用として資産に計上し、決算時に経過期間分を償却して計上します。

物件の契約期間が5年未満で、更新で再度支払うのであれば、契約期間で礼金を償却してください。

損害保険料

移転先物件の契約の際に、火災保険や地震保険に加入する場合は、保険料は勘定科目の損害保険料を使用します。

損害保険料は、事業用資産に対する損害保険で、支払った保険料の掛け捨てになる部分が計上可能です。2万円の火災保険料を支払った場合は、以下のように仕訳をします。

借方 貸方
損害保険料 20,000円 現金 20,000円

保険契約が2年以上の場合は、勘定科目は「前払費用」や「長期前払費用」を使用してください。

差入保証金

敷金を経費計上する際に使う勘定科目は、差入保証金です。

差入保証金とは、債務者が債権者に対し、取引や賃貸借の契約の履行を担保するために差し入れる現金を指します。

15万円の敷金を貸主へ支払った際の仕訳は、以下の通りです。

借方 貸方
差入保証金 150,000 現金 150,000

敷金は滞納や物件の損傷がなければ、契約終了時に返還されますが、仮に敷金の返還時に原状回復費用(5万円)が発生した場合は、以下のような仕訳になります。

借方 貸方
普通預金 100,000円 差入保証金 150,000円
修繕費 50,000円

会計用ソフトウェアによっては、勘定科目に敷金が設定されている場合もありますが、そちらを使用してもかまいません。

福利厚生費

入社や異動で転居が必要とされる従業員の引っ越し費用を事業者が負担した場合は、福利厚生費として計上できます。

福利厚生費とは、会社が給与やボーナス以外に、従業員が働きやすくなるために支出する費用です。

そのため、負担した従業員の引っ越し費用は、以下のような仕訳例で、福利厚生費として処理できます。

借方 貸方
福利厚生費 80,000円 現金 80,000円

事業主本人の引っ越し費用は、福利厚生費にならないので注意してください。

租税公課

登記している事業所は、移転時に移転登記の手続きが必要になりますが、登録免許税や印紙税は、勘定科目の租税公課で経費計上できます。

租税公課は、経費算入が認められるものと認められないものがありますが、税金や公共団体へ納める会費や罰金などが対象です。

同一法務局の管轄地域で事務所を引っ越した際、登録免許税を支払った場合は、以下のような仕訳例になります。

借方 貸方
租税公課 65,000円 現金 65,000円

なお、登記手続きを司法書士に依頼した場合は、報酬は「支払い手数料」や「支払い報酬料」で計上してください。

引っ越し費用を経費にする【注意点4つ】

引っ越し費用を経費にする注意

引っ越し費用を経費に計上する際の、注意すべきポイントを紹介していきます。

以下4つのポイントを知らずに引っ越し費用を経費処理した場合、経費計上を誤ったり、管理会計上の問題が生じます。

  • 領収書または支出の証明が必要
  • 事業に関係のない引っ越し費用は経費にならない
  • 自宅兼事務所の引っ越しであれば家事按分する
  • 過去に引っ越している場合は同じ勘定科目でまとめる

順番に詳しく解説していきます。

領収書または支出の証明が必要

事務所を引っ越しする際は、領収書や支出の証明書類を必ず保管しておいてください。

引っ越し費用は、領収書や支出の証明書類に基づいて経費計上する必要があります。

領収書以外で支出を証明できる書類は、主に以下の5つです。

  • レシート
  • 銀行やクレジットカードの利用明細書またはWeb明細
  • ATMの振込明細書
  • 出入金がわかる通帳のコピー
  • 出金伝票

Web明細は一定期間を超えると確認できなくなる場合があるので、早めに印刷しておきましょう。領収書を紛失した際は、再発行してもらうか出金伝票を活用してください。

事業に関係のない引っ越し費用は経費にならない

事業に関係のない引っ越し費用は、経費にならないので注意しましょう。

経費は原則として、支出が事業に直接関係していないものは計上できません。

具体的な例としては、楽器や美術品など、一般的に趣味と見なされてしまうものの引っ越し費用です。もちろん、ピアノ教室ならピアノの引っ越し費用は経費に計上できます。

しかし、仕事とは関係ない楽器や美術品の引っ越しは、個人的な引っ越しに区分されてしまうケースがほとんどです。

特に自宅兼事務所から事務所に引っ越す場合は、事業に関係ないものを運びがちなので、充分に注意しましょう。

自宅兼事務所の引っ越しであれば家事按分する

自宅兼事務所の引っ越しであれば、引っ越し費用は家事按分して経費に計上してください。

自宅兼事務所の場合、プライベートによる生活費と事業費が混在している費用は、規定のルールで計算し、事業に使用した分を算出しなければなりません。

引っ越し費用の家事按分は、一般的に自宅部分と事務所部分の床面積の割合で計算します。

例えば、引っ越し業者に支払った金額が20万円で、引っ越し先の事務所部分が3割程度であれば、6万円が経費に計上可能です。

過去に引っ越している場合は同じ勘定科目でまとめる

過去に引っ越ししている場合は、同じ勘定科目でまとめておくようにしましょう。

勘定科目を一定にしておかないと、決算書での正確な集計や、管理会計での分析や比較ができなくなります。

業務形態を変更して取引が増えた場合は、勘定科目の修正や見直しをして変更する場合もありますが、基本的には毎期継続して利用するのが原則です。

費用ごとに過去の金額と比較しやすくなるので、勘定科目はむやみに変えないようにしてください。

引っ越し費用を経費に計上して節税しよう

引っ越し費用は、適切に経費に計上できれば節税につながります。事業に関係するものなら基本的に経費に計上できるため、まずは勘定科目と該当費用を理解しておくのが大切です。

確実に経費に計上するためには、領収書などの管理や家事按分など、注意すべきポイントもしっかりおさえておきましょう。

また、引っ越しの費用を抑える際には、ぜひセーフリーをご活用ください。

セーフリーでは、法人や個人事業主の引っ越しに適した業者を多数掲載しており、複数業者からの比較も簡単にできます。

業者選定のお悩みの際は、ぜひお問い合わせください。

引っ越し費用はどこからどこまで経費にできる?項目・条件を徹底解説のよくある質問

  • Q. 引っ越し費用はどこまで経費として認められますか?

    事業に関わる引っ越しであれば、すべて経費にできます。

  • Q. 引っ越し代を経費にするには領収書が必要ですか?

    必要ですので、保存しておきましょう。

  • Q. 敷金は経費にできますか?

    敷金は退去後に戻ってくる費用であるため、経費にできません。