2024.08.05 2024.09.03
今回は、漏電ブレーカー(漏電遮断機)の仕組み・原理や構造について徹底解説します。
漏電ブレーカーは分電盤に取り付けられており、全国ほとんどの建物で設置されています。ですが、そもそもどんな原理で感電を防いでくれるのか、その仕組みについては詳しく知らない方も多いでしょう。
一般的に設置される3種類の漏電ブレーカーから、よくある漏電原因についても解説。漏電ブレーカーが落ちた際の対応なども紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
漏電ブレーカー(漏電遮断機)ってそもそも何?【類似機材との違いも】
漏電ブレーカーとは、電気回路の中で漏電が発生したとき、自動的に電流を遮断する装置です。家庭や施設における電気事故、特に感電や火災を防ぐために不可欠な安全装置として機能しています。
通常、分電盤に設置されており、スイッチ付近に「漏電ブレーカー」と記載。漏電を検知すると、15アンペアから30アンペアの範囲で回路を遮断し、安全を確保します。
通常ブレーカーとの違い
漏電ブレーカーは、通常のブレーカーと異なる機能を持っています。通常のブレーカー(安全ブレーカーやアンペアブレーカー)は、主に過電流の防止を目的としています。
過電流とは、契約されているアンペア数を超える電流が流れる症状で、過電流を防げれば電気機器や配線の損傷を防止します。
一方で、漏電ブレーカーは漏電を検出し、その際に電流を遮断するのが主な役割です。
過電流を防ぐ機能を持ちますが、漏電による感電や火災リスクを回避するのが主な役割。
配線用遮断機との違い
漏電遮断機と配線用遮断機は、どちらも異常な電流から回路を保護する機能を持っていますが、役割は異なります。
配線用遮断機は、電路に異常な電流が流れたとき、回路を遮断し電気設備を保護します。
一方、漏電遮断機は漏電を検出した場合に回路を遮断し、感電防止を目的としています。漏電ブレーカーは感電や火災といった、重大な事故を防ぐために特化した機能を持っているのが特徴です。
漏電ブレーカー(漏電遮断機)の仕組み・動作原理
漏電ブレーカーは、電流の漏れを検知し回路を自動的に遮断する装置です。通常、回路内の行きと帰りの電流は同じですが、漏電が発生するとこれらの電流に差が生じます。この差を「漏洩電流」と呼びます。
漏洩電流が発生すると、漏電ブレーカー内の検知コイルに電圧が生じ、その電圧が制御回路によって増幅。設定された閾値を超えると、回路を遮断し、感電や火災などの事故を防ぐ仕様です。
感電から身を守ってくれる
漏電ブレーカーは、感電による人身事故や、漏電による火災を防止するための装置です。電流が正常な状態であれば、行きと帰りの電流は等しくなり、遮断器は作動しません。
しかし、絶縁の劣化などによって漏電が発生すると、行きと帰りの電流に差が生じます。この差を検知することで、漏電ブレーカーは電路を即座に遮断。漏電電流が15mA〜30mA程度に達すると、0.1秒以内に遮断されるため、感電や火災のリスクを抑えられるのです。
使用環境について
漏電ブレーカーは、正常に機能するために特定の環境条件を満たす必要があります。以下の表に、漏電ブレーカーの標準使用環境をまとめています。
使用環境 | |
---|---|
温度 | -5~+40℃(24時間の平均温度が35℃を超えないこと) |
設置場所 | 異常な振動や強い衝撃がないこと |
通電電流 | 定格電流の80%以下で使用すること |
チェックポイント | ほこりや煙、腐食性ガスが発生しない場所 |
漏電ブレーカーは、上記の条件を満たした環境で使用しましょう。特に、腐食性ガスや過度な振動が存在する場所では、装置が正常に作動しない可能性があるため、設置場所の選定には注意が必要です。
漏電ブレーカー(漏電遮断機)の3つの種類とそれぞれの仕組み
漏電ブレーカーは、感度の違いによって3つのタイプに分類されます。それぞれ検知する漏電の感度や動作の速さが異なり、設置場所や用途に応じて使い分けられます。
低感度形
低感度形の漏電ブレーカーは、主にアーク地絡による損傷保護を目的としています。比較的高い漏電電流を検知し、主に高電力の設備や大規模な工場などで使用されます。
高速形 | 時延形 | |
---|---|---|
感度電流 | 3~20A | 3~20A |
動作時間 | 0.1秒以内 | 0.1~2秒以内 |
比較的高い漏電電流を検知し、高電力の設備や大規模な工場などで使用されます。
中感度形
中感度形のブレーカーは、感度が50~1000mA程度で、比較的広範囲の漏電を検知します。
高速形 | 時延形 | |
---|---|---|
感度電流 | 50~1000mA | 50~1000mA |
動作時間 | 0.1秒以内 | 0.1~2秒以内 |
主に幹線回路や長距離配線に適しており、接地抵抗と組み合わせて使用されます。
高感度形
高感度形の漏電ブレーカーは、非常に低い漏電電流(5~30mA)でも迅速に検知して回路を遮断します。
漏電表示装置 | 感度電流表示 | 反限時形 | |
---|---|---|---|
感度電流 | 5~30mA | 5~30mA | 5~30mA |
動作時間 | 0.1秒以内 | 0.1~2秒以内 | 0.3秒以内 |
感電防止に効果的であり、住宅や小規模施設などで広く使用されています。
漏電ブレーカー(漏電遮断機)の仕組みを知って対策を!漏電事故の原因4選
漏電事故は、家庭や施設での安全を脅かす重大な問題です。この機会に、漏電が発生する代表的な原因を把握しておきましょう。
電化製品の劣化・故障
電化製品を長期間使用していると、内部の回路が劣化し、漏電のリスクが高まります。寿命が近づいた電化製品は、正常な動作を保てなくなり、漏電の原因となるでしょう。
例えば、洗濯機や冷蔵庫などは特に水回りでの使用が多く、湿気や水分による影響を受けやすいです。定期的なメンテナンスや、製品寿命を迎えた場合の買い替えを検討し、漏電事故を未然に防ぎましょう。
水漏れ・塩害
水漏れは、電化製品や配線にとって大敵です。水に触れることで電気回路が漏電しやすくなり、感電の危険性が増します。また、塩害も漏電の要因となります。
特に沿岸部では、空気中の塩分が配線や電気機器に付着し、腐食を引き起こすケースも多くなるでしょう。
さらに、塩害は建物内のコンクリートにも影響を及ぼし、内部の電気配線にもダメージを与えます。
腐食が進んだケーブルを使い続けるのは漏電の原因ですので、交換や修理が必要でしょう。
コンセントのゆるみ・トラッキング現象(ホコリの吸収)
コンセントにプラグがしっかりと差し込まれていないと、そこから電気が漏れ、危険を伴います。プラグとコンセントの隙間にホコリが溜まり、空気中の湿気を吸収することで「トラッキング現象」が発生してしまいます。
トラッキング現象は、ホコリが通電することで発火するリスクを生むため、常に注意が必要。テレビやエアコンなど、常に差しっぱなしの機器も定期的にホコリを除去し、コンセントのゆるみを確認しましょう。
配線・絶縁体の劣化
建物内の配線や電化製品のプラグは、経年劣化により絶縁体が損傷し、漏電を引き起こす可能性があります。配線が古くなると、絶縁体が劣化して電線がむき出しになり、漏電のリスクが増大。
また、ネズミなどによるケーブルの損傷も、絶縁体の破損を招く原因となります。配線や絶縁体の状態を定期的にチェックし、問題がある場合は専門業者に相談して修理・交換し、安全な電気環境を維持しましょう。
漏電ブレーカー(漏電遮断機)が落ちた場合の対応【2ステップ】
漏電ブレーカーが作動して電気が遮断された場合、対応に困る方も多いはず。ここでは、漏電ブレーカーが落ちたときの、基本的な対応手順を2つのステップで説明します。
1.漏電した回路の特定
まず、漏電が発生した回路を特定します。以下の手順で進めましょう。
- 全てのブレーカーを「切」にする
- アンペアブレーカーと漏電ブレーカーを「入」にする
- 各安全ブレーカーを一つずつ順番に「入」にする
上記の手順で進めていき、特定の安全ブレーカーを「入」にしたときに、漏電ブレーカーが再び作動して電気が遮断される場合、その回路が漏電している可能性が高いです。
漏電の原因が特定の電化製品であれば、その製品のプラグを抜き、安全ブレーカーを再び「入」にして電力を復旧させます。この方法で電気が復旧した場合、原因はその電化製品にあると判断できます。
反対に、プラグを抜いても漏電ブレーカーが作動する場合は、家屋の配線に問題がある可能性が高いです。
2.電気工事業者に修理を依頼する
漏電の原因が判明したら、速やかに専門の電気工事業者に修理を依頼しましょう。家屋の配線が原因の場合、自力ではどうにもなりません。
漏電している電化製品に関しては、修理が可能であれば修理依頼し、修理が難しい場合は新しい製品への買い替えを検討してください。
漏電は重大な事故につながるリスクがあるため、早期に対処しなければいけません。適切な対応で、安全な電気環境を維持しましょう。
漏電ブレーカー(漏電遮断機)が落ちないように!使用上の3つの注意点
もし漏電ブレーカーが頻繁に作動していたら、電化製品の使い方に問題があるかもしれません。ここでは、漏電ブレーカーが落ちないようにする3つの注意点を解説します。
電気コードの取扱いに注意する
電気コードの取り扱いには十分注意しましょう。コードが長いと、ねじれや家具の下で踏まれることもありますが、このような状況が続くとコード内部の配線が損傷し、絶縁体の劣化やショートの原因になります。
コードが極端に曲がっている場合や束ねて使用している場合は、熱がこもりやすくなり、漏電のリスクが高まります。
延長コードなどを使用し、自然な形でコードを配置しましょう。
水や湿気の多い場所で電化製品を使用しない
水や湿気は電化製品にとって大敵です。特にキッチンやバスルームなど、水回りでの使用には注意してください。
湿気の多い場所で電化製品を使用すると、内部に水分が入り込む可能性があり、漏電の原因となります。また、濡れた手で電気機器を扱うのも厳禁です。
常に手が乾いた状態で電化製品を操作しましょう。湿度の高い環境ではこまめに換気してください。
電気工事業者に点検を依頼する
「漏電ブレーカーが落ちる原因がわからない」「これって漏電なの?」と、少しでも不安なら、電気工事業者に点検を依頼すると安心です。
電気工事業者は専門知識と技術で、漏電ブレーカーが落ちる原因を特定してくれます。また、漏電ブレーカーが落ちないようにするアドバイスも提供してくれるでしょう。
特に古い建物や長期間使用している電化製品が多い場合は、定期的に点検してもらうのがベスト。土日や24時間対応の業者もあるため、平日日中に対応できない方は、セーフリー掲載業者からその条件で電気工事業者を探してみましょう。
漏電ブレーカー(漏電遮断機)の交換・メンテナンス頻度とは?
漏電ブレーカーの寿命は約15年とされており、寿命を過ぎると機能が低下する可能性があります。
日常的に漏電ブレーカーの状態を確認し、「遮断器が異常に熱くなっている」「異臭や異音が発生している」「テストボタンが正常に機能しない」「外装が変色している」といった異常が見られた場合は、交換のタイミングと考えましょう。
また、メーカーの推奨する交換時期を守り、寿命が近づいた漏電ブレーカーは新しいものに交換すべきでしょう。
漏電ブレーカー(漏電遮断機)の仕組みを理解して適切な対応を!
今回は、漏電ブレーカーの仕組みや特徴について解説しました。漏電の原因や、取扱いの注意点についてもお分かりいただけたかと思います。
仕組みや特徴は何となく理解しておき、特に取扱いや交換・メンテナンスの頻度についてしっかりチェックしておきましょう。漏電ブレーカーについて少しでも不安に思ったり、異変を感じたら、電気工事業者に見てもらってください。
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漏電ブレーカー(漏電遮断機)の仕組み・原理とは?【なぜ感電を防げるのか】のよくある質問
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Q. 漏電ブレーカーは絶対に必要?
A.感電事故を防止するために、一般家庭でも漏電ブレーカーは必要です。
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Q. 漏電ブレーカーの交換費用はどれくらい?
A.漏電ブレーカーの交換費用は、7,000〜18,000円程度です。別途出張費や夜間・早朝・休日の割増料などが発生します。
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Q. 漏電したまま使い続けるとどうなる?
A.漏電したまま使い続けると、感電や火災の危険があります。漏電の危険から守るために、漏電ブレーカーが落ちる仕組みです。