エアコンのクリーニングは退去時に必要?賃貸物件におけるルール
2023.05.04 2024.08.30
賃貸アパートや戸建て賃貸退去時のエアコンクリーニング義務は、「貸主・大家さん」と「借主・住んでいる人」双方に発生する可能性があります。
正しい知識を身につけておけば、的確な対処が可能になる賃貸物件問題。この記事では、賃貸物件退去時のエアコンクリーニングにおける責任の所在について知りたい人へ向け、正しい対処方法を解説します。
目次
退去時のエアコンクリーニング義務は賃貸借契約の内容次第
賃貸物件退去時、借り手にエアコンクリーニングの実施義務(費用負担)があるかどうかは、入居の際に貸主と借主の間で交わされた賃貸借契約によって決まります。
賃貸借契約とは
賃貸物件の入居時には、貸主と借主の双方合意に基づいた契約が交わされます(賃貸借契約)。借主は貸主によって決められた賃料を支払います。契約が満了した際には、借りたものを元の状態に戻して返還しなければなりません。
賃貸借契約書の内容は、賃貸物件の利用にあたって大きな効力を発揮します。契約書に合意した時点で、賃貸借契約書に基づいた法的拘束力が生じるのです。
契約書の内容は個別の契約により異なりますが、一般的な賃貸借契約で記載される事項は以下の通りです。
- 契約期間や更新
- 賃料や共益費
- 初期費用
- 連帯保証人
- 物件情報(名称・所在地・構造など)
- 設備や付属品の内容
- 契約解除や明け渡しの条件
- その他「特約」
賃貸借契約書に、退去時のエアコンのクリーニングに関する具体的な記載がある場合には、当該者は契約書の内容に基づいた義務を負います。
契約書の内容が曖昧な場合
書面にまとめられる内容には限りがあるため、契約書で退去時の事細かなルールすべてを網羅しているわけではありません。退去時のエアコンクリーニングに関する具体的な記載がない場合には、貸主と借主の間で責任の所在が曖昧になる場合があります。
契約書の内容で判断がつかない状況を想定し、国土交通省では指針となるガイドラインを策定しています。
エアコンクリーニングをめぐってよく起こる貸主と借主のトラブルに対処できるよう、国が定めたガイドラインの内容を見ていきましょう。
退去時のエアコンクリーニングに関する法律の解釈
賃貸物件の退去時における責任の所在については、「原状回復義務」がポイントになります。
原状回復義務について
国土交通省のガイドラインによると、原状回復とは「借主の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、借主の故意・過失・注意義務違反や、その他通常の使用を超える使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。
上述の内容に該当する場合、費用は借主が負担する必要があります。ただし、「通常の使用」による損耗などの修繕費用は、賃料に含まれると解釈されているのです。
以下のように、借主が通常の使用をしていたのか、通常とは言えない程度の傷や汚れなどをつけてしまったのかで、負担範囲が変わってきます。
- 賃借人が通常の住み方・使い方をしていて、普通に発生すると考えられる損耗や毀損
- 賃借人の住み方・使い方次第で発生したり、しなかったりすると考えられる損耗や毀損(明らかに通常の使用等による結果とは言えないもの)
- 基本的には1であるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、発生または拡大したと考えられる損耗や毀損
このうち、2及び3の損耗や毀損については、借主に原状回復義務が生じるとされています。
さらに詳しく知りたい方はこちら
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退去時のエアコンクリーニングが貸主負担になる事例
貸主に対して、退去時のエアコンクリーニング義務が生じる具体的な事例をご紹介します。
貸主負担の場合が多い
ガイドラインでは、借主の「通常の使用」における損耗は賃料に含まれるとしています。つまり、賃貸物件を余計に傷つけたり汚したりせず、適度に換気や掃除がなされているような「通常の生活」が送られていれば問題ありません。この場合、退去時のエアコンクリーニングは貸主負担となるのです。
通常使用による損耗の範囲
賃貸物件の通常使用によるキズやよごれの範囲に含まれるのは、経年劣化、細かな汚れやキズなどです。家具を置いていたことによる壁の黒ずみや、畳の凹み、フローリングの退色などは、通常使用の範疇と認められます。
退去時のエアコンクリーニングが借主になる事例
借主に対して、退去時のエアコンクリーニング義務が生じる具体的な事例は以下の通りです。
契約書に入居者負担と明記されている場合
賃貸借契約書に、借主が退去時のエアコンクリーニングをする旨が記載されている場合です。契約書に合意した時点で、契約書の内容に基づいたクリーニング義務が発生します。
入居ルールに違反している場合
賃貸物件には、入居に際して様々な規則や制限が課されています。
借主があらかじめ決まられている規則や制限に違反しており、違反行為などが原因でエアコンのクリーニングが必要になったことがわかれば、借主はエアコンのクリーニング義務を負います。
<エアコンに影響を及ぼす入居規則違反の事例>
- 禁煙の物件での喫煙行為
- ペット不可の物件でのペット飼育 など
借主が通常の清掃や退去時の清掃を怠った場合
賃貸借契約時に利用している部屋の管理は、借主が責任を持って行わなければなりません。備え付けられているエアコンは、利用を継続することで汚れやカビが蓄積します。居住中における定期的な清掃は、借主の責任です。
掃除を怠った場合以外にも、水漏れや異音や異臭など、なんらかの異変を放置した場合や、自らの故意や過失がエアコンのクリーニングを必要とする原因を作った場合などが該当します。
自分で可能な掃除や対処を定期的に行うことで、退去時のトラブルリスクを軽減することができます。通常利用に関連するクリーニングの知識は、身につけておくべきでしょう。
購入した私物のエアコンを賃貸物件で使っている場合
賃貸物件の中には、入居時にエアコンが備え付けられていない物件も存在します。備え付けのエアコンがない物件を利用している借主の中には、自ら用意した私物のエアコンを利用している人もいるでしょう。
当然ながら、私物のエアコンのクリーニングは自ら行わなければなりません。クリーニングをして継続利用するのか、新品のエアコンを購入するのか、迷うことがあるかもしれません。
10年以内に購入したエアコンであれば、消費電気量は最新の機器と比較してもさほど変わることはないでしょう。
コストパフォーマンスを考慮するならば、現在利用しているエアコンのクリーニングを行った上で、新居でも継続利用することをおすすめします。
退去時のエアコンのクリーニング費用負担について
退去の際、借主にエアコンのクリーニングが必要になった場合には、クリーニング費用が発生します。必要な費用についてまとめました。
敷金でまかなえることが多い
敷金とは、賃貸物件の入居時に支払っている初期費用です。借主の家賃滞納時や、原状回復が必要な際に利用されます。敷金の相場は、地域や物件の品質によって様々ですが、およそ家賃の1ヶ月〜2ヶ月分が相場です。
借主にエアコンのクリーニング義務が生じた際には、あらかじめ支払っている敷金からクリーニング代が差し引かれることになります。
実費になった際の費用相場
最近の賃貸物件の中には、敷金や礼金などの初期費用を請求しない物件も多く存在します。敷金を支払っていない物件において、退去時にエアコンのクリーニング義務が生じた際には、実費を支払わなくてはなりません。
エアコンのクリーニングには専門の業者が存在します。退去時のクリーニングは、業者に依頼する方法がもっとも一般的です。以下に、賃貸物件のエアコンクリーニングを依頼する際の費用相場を掲載します。
賃貸物件で利用できるエアコンのクリーニング費用相場
<エアコンの種類> | 費用の目安 |
---|---|
壁掛けタイプ(セルフクリーン機能なし) | 1台あたり7,000〜15,0oo円程度 |
壁掛けタイプ(セルフクリーン機能あり) | 1台あたり15,000〜20,000円程度 |
天井埋め込みタイプ | 1台あたり25,000円〜40,000円程度 |
室外機のクリーニング | 1台あたり2,500円〜4,000円程度 |
自己流のクリーニングはおすすめできない
退去時のエアコンクリーニング費用を節約するために、自力で賃貸物件のエアコンクリーニングを行うことはおすすめできません。
エアコンは精密機械です。表面やフィルターの清掃程度であれば問題ありませんが、退去時のクリーニングには本格的な分解洗浄が必要になります。
エアコンの分解には、専門的な技術や構造知識が必要不可欠です。また、エアコンの洗浄には薬剤や水を使用するため、漏電や故障のリスクも孕んでいます。
万が一、自己流のクリーニングが原因でエアコン本体が故障してしまった場合には、本体の賠償が必要になる可能性もあります。
退去時のエアコンクリーニングは、専門の業者に依頼しましょう。
退去後(新たな物件の入居時)のエアコンクリーニングについて
現在の賃貸物件を退去後に、新たな賃貸物件を契約する場合には、エアコンのクリーニングについて確認しておく必要があります。賃貸物件に備え付けられているエアコンは、必ずしも新品とは限りません。
あらかじめエアコンが備え付けられている物件では、入居時のエアコンクリーニング義務は貸主の大家さん側にあります。
多くの物件では、新しい借主の入居前にハウスクリーニングを行なっています。エアコンのクリーニングも行われていることが一般的ですが、確実ではありません。
クリーニングが行われていない場合や、不十分である場合には、貸主の責任として業者に依頼できます。新しい物件の入居時には、エアコンのクリーニングの有無を確認しておきましょう。
退去時のエアコンのクリーニングで揉めないためには
退去時のエアコンクリーニングの義務を負う者は、状況に応じて異なります。責任の所在や費用の負担で余計な揉めごとを起こさないためには、以下の点に注意しましょう。
自分で定期的にクリーニングを行う
ガイドラインに基準となる定義が示されているとはいえ、エアコンの状態は個別の環境によって異なり、「通常の使用」の範囲は曖昧になりがちです。借主としての怠慢を指摘されないためには、定期的なクリーニングをおすすめします。
定期的にエアコンを利用する人は、自分でできる範囲の清掃(表面の掃除やフィルターの洗浄程度)に加え、年に一回は業者を利用したクリーニングを行いましょう。ただし、クリーニングを行う際には貸主に一報を入れてください。
契約内容に沿った利用を心がける
賃貸借契約書には、賃貸物件を利用する際に必要になる様々な規約が記載されています。契約内容に沿った物件利用および、規約の遵守を心がけましょう。
少しでも違和感を感じるならエアコンクリーニングを検討しよう
エアコンの内部には、使用の有無に関わらず汚れが蓄積していきます。賃貸借契約中や契約前には、意識的にエアコンの状態を確認しておくことが重要です。
エアコンに少しでも違和感を感じた際には、クリーニングを検討してみましょう。
エアコンのクリーニングは退去時に必要?賃貸物件におけるルールのよくある質問
-
Q. 退去時のエアコンクリーニングはいくらですか?
A.エアコンの種類によって異なりますが、相場は以下の通りです。
・壁掛けタイプ(セルフクリーン機能なし):1台あたり7,000〜15,000円程度
・壁掛けタイプ(セルフクリーン機能あり):1台あたり15,000〜20,000円程度
・天井埋め込みタイプ:1台あたり25,000円〜40,000円程度 -
Q. 退去時のエアコンクリーニングは誰が払うのですか?
A.国土交通省のガイドラインによると、通常使用の範囲であれば、貸主(大家さんや管理会社)側に支払い義務があります。
ただし、カビの放置やタバコのヤニの付着など、通常の使用範囲を逸脱している場合には、借主(居住者)が負担する可能性があります。 -
Q. 退去時のクリーニングは何をするのですか?
A.設備内部の細かい部分から、部屋全体をクリーニングします。エアコンのクリーニングも含まれますが、清掃の範囲は貸主(大家さんや管理会社)によって異なります。
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